「リーン・スタートアップ入門」に行ってきました
徳島健康科学総合センターで開催された リーン・スタートアップ入門 *1 参加時に取ったメモを公開します。
講師は、Lean Startup Japan 代表 和波俊久さんでした。
リーン・スタートアップとは
リーンとは「無駄がない」こと。
1
〈人・動物が〉細身で健康な, 余分な肉のない(⇔fat);
〈顔が〉細い;
〈肉が〉脂肪の少ない, 赤身の2
[ leanの意味 - 英和辞書 - goo辞書 ]
〈会社などが〉むだがなく活力のある.
不確実な環境下で行われる、新しい取り組みを行う手法。
→今の時代、予め回答が分かっている確実な環境ってあるの
→そこで、リーン・スタートアップ
コストをあまりかけずに、アイデア等に基づき最低限の製品やサービス、試作品を作って顧客の反応を見る検証サイクルを繰返すことで、起業や新規事業の成功率を飛躍的に高めていくマネジメント方法。
ソフトウェアが世界を飲み込んでいる
全ての分野で、ソフトウェア(IT)が使われるようになっている。
農業などでも。
そして、ソフトウェアが結合した分野が一度でも成功すると、その分野のボーダーレスな競争が始まっている。
今の時代、開発基盤が基本無料となっているため、米国の中学生が1日でサービスをリリースする時代になっている。その中学生と争わなければいけない。
[キーワード] フィードバック・ループ
アイデア
→[構築]
→MVP(Minimum Viable Product、最小単位での機能)
→[測定]
→データ(測定データ、評価指標)
→[学習(Learn)]
→(アイデアに戻る)
新たな事業を小さく始めて成功するかどうかを早期に見極め、成功しないと判断したら、すぐにアイデア等を改良したり、アイデア等の内容を一新したりして、検証を繰り返すこと。
傷が浅いうちにアイデア等を変更、修正し、大怪我をして事業が継続できない事態に陥るのを防ぐために、検証を繰返し続ける事で成功へと近づけていく。
上記の検証を繰返して行く事でフィードバックのクオリティーを上げていき、無駄なフィードバックを省いていく。
[キーワード] MVP(Minimum Viable Product)
最小単位での機能。実際の商品でなくて良い。
デモ動画とか、ブランドページとか、ペーパー・プロトタイプとかユーザー・ニーズを測定できる最低限のものでよい。
[キーワード]Pivot(ピボット)
路線変更のこと。
最初のアイデアに固執せず、ユーザー・ニーズのある方向に切り替える。
例)Youtube:
最初はデート相手を見つけるWebサービスで、自己紹介用に動画を投稿できる機能があった。
→みんなが面白動画を投稿するようになり、動画投稿ばかり見るようになった
→動画投稿サイトに特化
コンサルタント業務でのチェック項目
和波さんがコンサルタント業務をする上での重要なチェック項目
捨てること
- アイデアに固執すること
- 私たちは製品開発をやっているのではなく、事業をやっている
- 需要がなければ、すごいアイデアも役に立たない
- 最初から大きなヒットを狙うこと
- イノベーションは最初は小さく始まり、徐々に浸透する
- 製品開発に力を注ぎ込むこと
- 最初から作り込まず、MVPでユーザー・ニーズを測定しよう
- Waterfall開発
- ユーザー・ニーズがあるかどうかを聞けるのが遅い
- 繰り返し開発で、何度も失敗し、失敗から学ぶことの方が重要
- プロジェクト化
- 期限のあるプロジェクトになってしまうと、繰り返しを行うことをしなくなってしまう。
- メンバーに、効率性を求めること
- メンバー各自に得意分野をそれぞれやらせれば、一見効率性が良いように思われるが、個人個人が自分の担当分野のことしか考えず、素晴らしいアイデアは生まれない。
- チーム全員で取り組まないとダメ。
行うこと
- 新しい評価基準をつくること
現在ある評価基準は既存事業に最適化されている。
人は評価基準に沿って行動してしまうので、新しいことができなくなってしまう。
人事管理、進捗管理、事業評価の基準を変更しなければならない。
基準に対する模範解答はない。
動きながら常に整備することが重要。
和波氏がコンサルタントしている企業では毎朝15分、その日に行うことを測る基準をみんなで話し合って、夕方に答え合わせをやっている。
参考)野球における新しい評価基準 / Lean Startup + Baseball for Moneyball
リーンスタートアップ導入のポイント
- いきなりすべては変えられない
- 変えられるところから変えていく
- 事業が必ず成功するとは限らない
- しかし、変化に強い体質になる。
- フィードバックを繰り返すことで、市場からのニーズの広い出し方が上手くなる。
- できるだけ、小さく始める。
- 最初の顧客の見つけ方
「馬車がないのに車は売れない」という言葉がある。
馬車に対する不満がなければ、車は売れない。
馬車が開発されていないのに、いきなり車は売れない。
課題として既存製品の「代替手段」に対する不満を考える。
不満を持っている人が、最初の顧客になる。
参考)アーリーアダプターに出会うための最初の1枚 / Lean Diagram
- 顧客にインタビューをしても、顧客は善意で「いいね、それ買うよ」と嘘をつくことが多い。
- 嘘を見破るには、経験を積むことが重要。
感想
ユーザー企業は、日々直面する市場の変化に晒されています。
その中で、当初の計画通りに製品・サービスを作成しても、投入する時点では期待通りの反響がなかったり、そもそもユーザーのニーズがなくて使われないということが よくあります。
そのため、何度もフィードバックを得ながら繰り返し開発を行う「アジャイル開発」に注目が集まっています。
「リーン・スタートアップ」は「アジャイル開発」に極めて親和性の高い話でした。
また、和波さんの話で一番心に残っているのは、『企業活動の中で法律的にグレーな部分に踏み込んでいいのか』という会場の質問に『大企業とスタートアップでは答えが違う。スタートアップには失うものはあるのか?』ということです。ニュアンスが上手く伝わるかどうか分かりませんが、違法な活動を勧めているのではなく、自分の信念をかけて挑戦しろという風にとらえました。宅急便を始めたヤマト運輸のように規制と戦って、顧客が求める新しい市場を切り開くことこそがスタートアップに求められる役割だと感じました。
ちなみに、日本では、つい5年ほど前まで、検索エンジンが各サイトのHTML等を自サーバーに取得するため、検索エンジンは著作権的にグレー とされていました。
検索エンジンが「違法」、いつまで続く? |池田信夫の「サイバーリバタリアン」
馬鹿げた規制は乗り越えていくべきですよね。
追記
6/14に大阪で行われた Embedded Technology West 2013 (ETW2013) ヒートアップセッション での和波さんの講演を アジャイルラジオのスタッフさんが動画配信してくれました。徳島での公演で、農家の方から野菜づくりにリーン・スタートアップをどう活かせばいいのか?という質問が出たというエピソードも語られています。
Video streaming by Ustream
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*1: 徳島県委託事業 平成24年度 第10回SOHOセミナー http://www.our-think.or.jp/digital/?p=2738