鎌玉のよしなしごと

日々のよしなしごとをつぶやいているだけ。由無し言(とりとめもない話)か、良しな仕事(nice job!)かは、あなた次第。

第1回 Hack For Japan のオンライン・アイデアソン振り返り

はじめに

2011/3/19〜21の3連休の期間中、東日本震災復興支援サービスを作成するプロジェクトとして「Hack For Japan」のアイデアソンおよびハッカソンが開催されました。

ちなみに、ハッカソンとは「Hackathon:Hack と Marathon を合成した造語」で、あるテーマに沿って、決められた期限内に開発者たちが開発を行い、最後に参加者全員の前でプレゼンするというイベントのことです。
また、アイディアソンとは「Ideathon:Idea と Marathon を合成した造語」で、開発の前段階でのアイディアを出しあい、それをまとめていくイベントのことです。
一般的な定義としては、時間を限定して、参加者全員がつくりあげるイベントのことを指します*1

私は、オンライン上でアイディアソンに参加しました。
いささか隔世の感がありますが、振り返ってみます。

Hack For Japan 開催前の日々

東日本大震災発生当初

実は阪神・淡路大震災のとき、「被災地にいるわけでもないのに、震災報道を視聴することで、無力感から無気力となる」状態に陥りました。当時の日記から抜粋してみます。

1995年1月17日午前5時46分52秒 阪神・淡路大震災 が発生。
私は当時、香川県高松市に住んでいたが、もの凄い揺れを感じて目が覚める。
ただ、被害としては、タンスからモノが落ちてきたぐらい。
すぐさま、テレビをつけて、震源地を確認したが、5分ぐらいしても詳しい情報は得られず、また眠る。
8時ごろ目が覚めて、テレビをつけると、画面の向こう側は真っ赤に燃えていた。
神戸で、震災に伴う大火災が発生していたのだ。
テレビで報道される、この世のものとは思えない光景に魅入られ、ずっとテレビの前から離れることができなかった。

何度も遊びに行った兵庫や淡路の惨状に心が打ちひしがれました。
しかし、ボランティアに行く勇気もなく、鬱々とした気持ちをいだいている生活が相当長く続きました。

今回の震災が発生したとき、その反省を活かし、テレビの視聴をできるだけ避け*2、できる限り震災前と同じ日常を送ろうとしていました。このときは、阪神・淡路大震災と同様に、数日で被害状況が整理され、1週間も経たないうちに行政が中心となって復旧作業が始まるだろうと考えていました。
そして、自分にまずできることをやろうと、日本赤十字やNPO団体に対して義捐金の寄附を行い、普段通りの生活を営んでしました。

そんな中、3/17に、佐々木俊尚氏の以下の記事を目にしました。

今回の災害は阪神大震災の時とはまったく異なるということだ。

阪神大震災では、兵庫県や神戸市、芦屋市といった各自治体の機能は生きていた。したがって政府と日本赤十字社からの物資や義援金は、自治体経由で被災地に送り込むことができた。この結果、阪神大震災の教訓として「物資ではなく義援金で」「救援は赤十字社に一本化」という考え方が広く定着した。

ところが、今回の震災では救援の受け皿となる自治体そのものが各地で消滅している。この結果、赤十字や自衛隊や消防隊の救援は、全体をカバー仕切れていない。どこかの避難所に集団で避難している人たちが、誰からも発見されず、水も食糧も燃料も電気も電話もなにもなく、完全に孤立してしまっているという酷い状況が生まれてしまっているのだ。

だから今回の震災では、阪神大震災のルールを適用すべきではない。

被災地に救援物資を! いま私たちに求められていること | 佐々木俊尚公式サイト

ショックでした。自分の想定を超える未曽有の災害が発生していたのです。
義捐金以外でも、何かできることをやろうと決心しました。

Google Person Finderの入力ボランティアへの参加

まず、手始めに、はてなのホットエントリーで見かけたGoogle Person Finder http://japan.person-finder.appspot.com/ の入力ボランティアを手伝うこととしました。
調べてみると、有志の方が「まとめWiki http://www45.atwiki.jp/ganbare-tohoku/pages/24.html 」を作成され、相談をしながら作業が行われていることが分かりました。時間は掛かりましたが、Wikiに全て目を通してから作業に加わりました。

手伝ってみて、これは企業とボランティアが協調しあいながら、オンライン上で行われる全く新しい形のボランティアだということを強く感じました。「まとめWiki」では、有志の手により、作業がマニュアルされていき、作業を効率化する様々なツールがリアルタイムで作成され、提供されていたからです。

しかし、私が手伝った3/18,19は、新聞の避難所名簿記事を撮影した写真が大量にアップロードされている状況でした。そして、これを人海戦術でひたすら入力、複数の写真に掲載された人名が重複しないようにチェックという作業となっていました。入力しながら、元が新聞記事だからOCRで自動的に取り込むようにできないのだろうか、または、避難所名簿データを直接行政からGoogle Person Finderのデータベースに反映してもらえるようにできないのだろうか*3と強く思いました。

そんなとき、twitterのタイムライン上で、Hack For Japanを知ったのです。

3/19-3/21 に、被災者支援のためのサービスを開発するためのオンラインイベント “Hack For Japan” を開催することになりましたのでお知らせ致します。

“Hack For Japan” 開催のお知らせ - Google Japan Developer Relations Blog

Hack For Japanへの参加

参加の1番の目的は、Googleの方が多く参加されていると聞いて、この機会にぜひ「Google Person Finderの機能向上」を行ってもらえないかとの要望を伝えることです。
また、このとき、IT関係の個人や団体で復興への支援サービス作成が多く予定されていました。ただ、それらには重複しているものが多く、互いに協業しあった方がいいのではないかと考えていました。そして、その協業の場として、Hack For Japanが開催されるということに関心を持ちました。
ただし、自分が扱えるのはC/C++/Javaで、また開発スピードにも自信がないため、開発のお手伝いは止めておこうと考えながら、参加してみました。

■1日目(アイデアソン1日目)

アイデアソンのツールとして、Google WaveGoogle Moderatorが用意されていました。
しかし、Google Waveは、サービス停止が決定*4し、操作方法を覚えれば非常に使い易いですが、操作方法を覚えるのが大変なツールでした。
また、Google Moderatorは、Yes または Noで回答できる質問には向いていますが、アイデアを煮詰めていくのに使うのは、なかなか難しいツールでした。*5
1日目は、Google Wave上の議論を何とか読み通し、Google Moderatorの投票を行いました。
もちろん、「Google Person Finderの機能向上」のアイデアには賛成を投票しました。

■2日目(アイデアソン2日目)

開発者たちの夜は遅く、朝はあまり参加者がいないようでしたので、まず、2日目のGoogle Wave上に、1日目にまとめられていた「既に開発済みのサイト、アプリ一覧」をメンテンナンスしてみました。その際、自分が知っている既に復興支援のために提供されていたサイトやアプリを追加してみました。

また、Waveの使い方が分からないと、#hack4jp のタイムライン上でつぶやいていたら Googlerの 三廻部 大 ( @dmikurube ) さん達が教えてくれたので、ツイートでまとめてみました。

それから、Google Moderator上のアイデアが拡散し、重複も目立つようになったので、Google Moderator上のアイデアを分類ごとに整理して、Wave上に登録しました。

■3日目(ハッカソン当日)

徳島でもハッカソンが行われていましたが、用事があったことと、前述した通り、開発スピードが遅いため、会場には行きませんでした。
代わりに、できるだけ多くの人に、Hack For Japanに参加してもらいたくて、はてな匿名ダイアリーHack For Japan への参加方法(第1版) を書いてみました。

そして、Google Moderatorで、アイデアが増々拡散していくことに危惧を覚え、アイデアごとに、はてなブックマークタグ機能でソーシャルによる集合知を使うことにより、なんとかまとまらないかと考えましたが、ちょっと私の技術力では無理でした。*6

閉会時に、Googleの及川さんの緊急講演*7があり、私はここで衝撃を覚えるのです。てっきり、このHack For Japanは、Googleなどの企業が主体となって進められていると考えていたのですが、及川さんを始めとするIT技術者たちが、まず被災者支援に何かできないかと立ち上がって、個人的な人脈で、賛同者を集めて開催に漕ぎ着けたものだということが分かったのです。Hack For Japanのスタッフは自主的に参加し、手弁当で動いていました。*8

Hack For Japanはマッチングの場として提供されているものであり、もっと参加者として能動的に動くべきだったと思いました。

”Hack For Japan”では、一日のhackathonで終わることなく、継続的に良いものを作るべくハックし続けていきたいと考えています。

“Hack For Japan” 開催のお知らせ - Google Japan Developer Relations Blog

東日本大震災の復興支援のために、Hack For Japanの動きを追い、応援と協力をしていこうと決心しました。

【参考情報】第1回 Hack For Japan に対するリンク集

*1:たぶん

*2:最近、テレビ番組自体をあまりみなくなったというのもありますが

*3:後日、各県や警察、マスコミの情報がGoogle Person Finderに反映されるようになりました

*4:葬式の模様 http://www.youtube.com/watch?v=tAyAoJ-SdWI

*5:Moderatorを使用するなら質問の仕方を工夫するか、Moderatorの上にラッパーを被せて一覧性をよくすることが必要だと思われた。

*6:話は別ですが、京都会場には、はてなの近藤社長も参加されており、震災に関するブックマークを集めたサービスを作成されていたのですが、Twitterのハッシュタグのように、はてなブックマークのタグを皆で共有する(例えば 「311ボランティア募集」)ことができていれば良かったのかも知れないと思います

*7:[http://www.hack4.jp/RelatedInfo/Events/techtalk/takoratta_in_kyoto:title]

*8:緊急講演の前半部分の書き起こしは、はてな匿名ダイアリー [http://anond.hatelabo.jp/20110327203445:title] に書いてみました。