「オープンセミナー2011@徳島 #OST2011 」に行ってきました
今さら書き上げたオープンセミナー2011@徳島の備忘録を、公開します。
オープンセミナー2011@徳島 とは
『ファイティング・オープンIT・アゲインスト・デザスター 〜災害と戦うオープンIT〜』をテーマに、2011.11.26(土)に開催されたセミナーです。
詳細は、11月26日 オープンセミナー@徳島 2011(徳島県) を参照ください。
また、当日のツイートは http://togetter.com/li/219442 にまとめられています。
「その時ケータイのネットワークは 〜東日本大震災を経て〜」
- 講師
- NTTドコモ東北支社 経営企画部長 松木 彰 さん
携帯電話のネットワーク網の復旧の詳細については、会場でも上映された ムービー を参照ください。
ムービー鑑賞の後、松木さんがスライドを使用して説明してくだされました。
震災の被災者、復旧の当事者、そして、携帯電話のリーディングカンパニーの社員として今後の対策にかける言葉は重みがあるものでした。
以下、抜粋です。(パネルディスカッションでの、松木さんの発言内容も含んでいます)
- 設備の被害は「ほぼ半分が使用不可」という状況だった。
- 地震や津波の直接被害、地震による伝送経路の遮断なども多かったが、最も被害が大きかったのは「長時間停電による基地局のバッテリの枯渇」であった。
- 普段は、光ファイバによって通信を行っているが、被災後は無線の中継車や衛星*1を経由するように対策した。
- 携帯電話の方は4月末で震災前の状態にほぼ復旧できたが、固定電話の復旧が遅れている。
- 各戸に対して一本一本、線を接続しないといけないため。
- 早く復旧を行うためにいろいろと考え実行した。
- 福島原発近くでは、30km離れたところに高性能アンテナを設置した。
- この高性能アンテナは、北海道の国定公園で園内にアンテナを立てないでくれという要望からうまれたものだった。
- リアルタイムに復旧情報を提供するため、「復旧エリアマップ」という形で情報提供した。
- 被災地でドコモが提供し、喜ばれたサービス
- タブレット端末の貸出。ネットで調べものをするために使用されていた。
- 携帯電話の充電サービス。ドコモだけでなく、auやソフトバンクの携帯も充電可能にした。
- 携帯電話のデータ復旧サービスの無料化(通常は5250円)。これが最も喜ばれた。だいたい8割の確率で復旧できる。
- ドコモとして新たな災害対策として、以下を行っていく。
- 重要エリアにおける通信の確保
- 被災エリアへの迅速な対応
- 災害時における利便性向上
- 個人として、今回の3つの情報収集のフェイズがあったと考察する。
- フェイズ1 : 被災直後。安否確認。
- フェイズ2 : 2週間後。行政などが提供している生活支援の情報収集。
- フェイズ3 : 1か月後。生活再建に向けた援助プランなどの各種情報の収集。
- 災害伝言板 は是非とも利用するようにして欲しい。
- 災害伝言板を利用することで無駄なトラフィックの発生を抑えることができる。
- お客様のお探しのページが見つかりません−404 Not Found | NTTドコモ で、毎月、試しに使用することができるようになっている。
- ファミリー割引を利用している場合は、ファミリー割引の同一グループ内の携帯電話番号の入力が不要となっている。
- (筆者注:体験サービスとファミリー割引のことは知らなかった。今度、試してみよう。)
- ドコモ内部では、音声をIP化。どこの交換器が落ちても代替可能とした。
- 人と技術のハイブリットが強い。技術だけでは弱い。
- 地震が来るのを前提にやった方がよい。
- 経験と訓練が重要。
- ドコモでは、大規模コンサートがあるときは、それを災害と見立てて移動基地局車を派遣。予行演習をし、経験を積んでいる。
会場の参加者へのプレゼントとして、ドコモのクーポンが配布されました。
来年1月末までの期限付きなので、それまでに使用するかどうかが悩みどころです。(「Galaxy Nexus」がLTE対応をしていれば、悩まずにXiへ契約変更したのに)
後半のスライドを使用した説明では、スマートフォンに「mobishow」*3というアプリを入れて、DropBoxに保存された資料をワイヤレスでプロジェクターに映し出されていました。
松木さんは、多くの方に被災地の現状、復旧の歩みの情報を提供するために自費で徳島まで来られたそうです。頭が下がる思いです。
■参考情報
- NTTドコモの災害対策への取組み
「Amazon EC2 大規模障害 SaS 「My Redmine」サービス再開までの67時間30分」
- 講師
- ファーエンドテクノロジー株式会社 代表取締役 前田 剛 さん
「Amazon EC2」で2011年4月21日に発生した大規模トラブルに対して、SaaS「My Redmine」サービスを提供している前田さんが以下に対処したのかというお話をお聞かせいただきました。
残念ながら、サービスの詳細部分や今後の戦略に触れるために、詳細は書けません。だから要点だけ。
- トラブルが発生したときには、顧客に対して細かな情報提供が重要。新しい情報がなくても定期的に報告すること。
- クラウドも止まる、壊れるという前提で考えよう。
前田さんの話からは、クラウドの使い方の心構えがよく伝わってきました。
「オープン技術で作成するガイガーカウンター」
- 講師
- Open Geiger Project
- コーディネーター
- オープンフォース 河野悦昌 (@nanbuwks) さん
福島にいるOpen Geiger Projectの方々と、Skypeを繋げて会合が行われました。
- Open Geiger Projectとは、ガイガーカウンターの作り方をすべて無料で公開し、それを誰もが自由に利用できるようにするプロジェクト。
- キーワードは、オープンソース、オープンハードウエア。
- オープンで行っているため、さまざまなプロジェクトと協調しあっている。
- 河野さん *4や 今岡工学事務所代表 今岡通博さんによる 日本Andoroidの会 四国支部の取り組み。
- GClue 代表取締役 佐々木陽さんによる日本Andoroidの会 会津若松支部の取り組み。
- 2つが共同で結成した 日本Androidの会 原子力部 NINJA(Nuclear Inspector’s Network JApan)の会。
- NINJAの活動紹介 http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20110726/362852/?ST=android-dev&mkjb&P=2
- ITによる復興支援プロジェクト Hack For Japan での「Hack For Geiger」。
- open-geiger-development-kit - Open Source and Open Hard Geiger Counter Project - Google Project Hosting
- 製品化第1弾。あたらしもん | 共同購入型モールによる 放射線測量計 RadScan。
- 製品化第2弾。ガイガーFUKUSHIMA*5。
- ガイガーFUKUSHIMAは、iPhone接続型とLCD型の2つ。
- TechCrunchでのガイガーFUKUSHIMAの紹介 表示まわりをiPhoneにまかせて安上がりにしたガイガーカウンターが日本の三和製作所から | TechCrunch Japan
- 国や県が放射線量をモニタリングした結果が、民間に行きわたってこないことに対する憤り、くやしさから始めた。
- 今月号のラジオライフでガイガーFUKUSHIMAの特集あり。
- エステーのエアカウンターより、高感度のガイガーミューラー管を使用しているガイガーFUKUSHIMAが高評価。
- 会場には、ラジオライフの好意により、その特集記事も置かれていました。
- オープンなプロジェクト
- ボランティアやNPO団体、オープンにしていることで多くの人から支援を受けている。
- 国や自治体から情報が何ももらえない中、ソーシャルなネットワークから情報を貰えた。
- オープンにしていることで、自分も何かしたいという想いが集まった。
- オープンだからこそ、いろいろな方の知識や技術を集めて、スピィーディにできた。
線量計の校正はどうするのかという質問に、高い線量になっている土はどこにでもあるという答えを聞いたときは、打ちのめされる思いをしました。
実際、徳島に送っていただいた土からは高い線量が出ており、ガイガーカウンターが会場に鳴り響いていました。
余談ですが、12/23にオープンフォースと今岡工学事務所に主催による 12月23日 福島ガイガーカウンター勉強会 #7 in Tokyo(東京都) があるようです。
「PostgreSQLで出来る高可用システムとディザスタリカバリ」
- 講師
- 日本PostgreSQLユーザ会 PostgreSQLのしくみ分科会 笠原 辰仁 さん
- PostgreSQLでは、9.0で同期レプリケーション、9.1で非同期レプリケーションの機能が実装された。
- レプリケーションに使用されるのがWAL(Write Ahead Log)。ワルと読む。
- WALとは、トランザクションログのこと。もしくは機構を指すこともある。
- PostgreSQLは基幹系に強い。一方、MySQLはWebシステムに強い。しばらく見てない間に、進化していることも。
- OSSは日進月歩。使用するには、ちゃんと検証をするのが重要。基盤全部を見れる人材が必要となるのでは。
PostgreSQLのスライドは、笠原さんがどこかに公開すると話されていたので、詳細はそれを参照してください。*6
余談
会場では、他に ETロボコン の紹介がされていました。
ETロボコンは、よくNHKでやっているロボコンとは違い、部品や組み立てのレギュレーションが厳密に定義されており、リアルタイム組み込みソフトの開発者向けの内容となっています。
このETロボコンの中四国大会では、徳島と高知の参加者がいなかったそうで、来年は是非とも参加して欲しいそうです。
終わりに
講師の皆さま、有意義な話をありがとうございました。
また、このような中身の濃いセミナーに参加できる機会を設けてくださった主催者の皆さま、ありがとうございました。
*1:タイのIP-Star。某社でも使用。某社は回線が細くて4人ぐらいしか通話できないとDisっていました。
*2:携帯各社が連携する動きもあるようです。 http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20111128/375140/
*3:台湾のベンチャー企業が作成したアプリ http://ventureclef.com/blog2/?p=232
*4: 河野さんの活動 http://openforce.project2108.com/?cloudcande
*5:公式な販売場所は NPO法人営業支援隊 http://eigyoshientai.jp/ のみ。類似品に注意。
*6:いつ、公開されるのだろう?